Taku Sakaushi

Diary

大衆との共振

On December 4, 2007
by 卓 坂牛

電車の中で成実弘至のファッション文化史を読んでいて妙に腑に落ちることがあった。それはアメリカンカジュアルの創始者クレア・マッカーデルの部分を読みながらであった。マッカーデルはシャネル同様古典的な服飾を革命的に瓦解したと言われている。しかし二人には大きな差異があり、それは前者が上流階級を相手にし、後者は限りなく一般大衆の身体に結びついていた点である。そこを読みながら、僕は先日買った中野正貴の写真集、My Lost Americaを眺めていた時の気分を反芻していた。80年代のアメリカに感情移入しイカレタその気分をである。イカレタ理由は80年代自分がアメリカにいたからだろうとその時は思ったのだが、今日成実の本を読みながら理由は別だなと感じた。
少し恥かしい話だが、これはどうも僕の生い立ちの中で培われた精神性の中に原因があるように思われた。並みの家庭で育った僕は経済的には中流だが、60年代の日本の平均からすると文化的にはかなりレベルの高い親に育てられ、ある種の情操教育を受けていた。しかし一方でピュアなマルキストな父親の影響があったからだと思うが、根底に体制を嫌悪し権威をあざ笑う精神性が子供のうちから染みついてしまった。情操教育と権威批判は必ずしも矛盾するモノではないのだが、だからと言って相性の良いものではない。そもそも文化的情操教育なるものは権威のお墨付きを得てこそ達成されるものだから。
そんな矛盾が結局、自らの進む道を純粋な芸術から遠ざけ、建築などに向かわせたのかもしれない。そして、こうした精神性は高貴なハイカルチャーを志向すると同時に、そこに胡散臭さを見てしまう自分を生み出した。例えばヨーロッパの建築や文化の研ぎ澄まされた感覚を称揚しつつその中に虚構を見、アメリカの弛緩した空気に安堵を覚える自分を作り出したように思われるのである。マッカーデルの志向はそうした僕の」安堵」を思い出させた。つまりMy Lost Americaを見ながらイカレタ僕の気持ちとは「一般大衆の身体」が持つ精神性への本能的な共振だったと納得されたのである。

contemporary theory

On December 3, 2007
by 卓 坂牛

今日中に帰ろうと思ったのだが、余りに雑用が多く諦めた。雑用を終えて、一昨日届いたCharles Jencks and Karl Kropf 編 Theories and Manifestoes of Comtemporary Architecture second edition Wiley-Academy 2006 の目次に目を通した。1950年代からの主要な建築理論とマニフェストの要約が並んでいる。この中に日本の建築家が四名入っている。黒川、磯崎、槇、安藤。彼等が国際的なのは、やはり彼等の作り方が国際標準に照準を合わせているからなのであろう。世界を相手に作るのか、日本を相手に作るのか、日本のある場所を相手に作るのか?作り方の照準を定めるのは重要なことである。ところでこの本は第二版であるが一版に加えられた理論の著者はCecil Balmont, Foreign Office Architects, Daniel Libeskind, MVRDV, Lars Spuybroekhttp://nl.wikipedia.org/wiki/Lars_Spuybroek, UN Studio, West8だそうだ。どうもジェンクス色が濃い。複雑系に偏っている。例えばこの中にはミニマル系は全く取り上げられていない。

シンポジウム

On December 3, 2007
by 卓 坂牛

12月2日
京都造形芸術大学と東北芸術工科大学の合同展覧会とシンポジウムが、横浜のBank Artで行なわれ、そのシンポジウムに呼ばれて顔を出した。京都からは中村勇大さん高崎正治さん、東北からは竹内昌義さん元倉真琴さんが来られ、両校の3年生が20名くらいずつ3年の課題を持って集まっていた。両校は姉妹校ということで数年前からワークショップなどを開いているそうで、課題を集めて展覧会にしたのは今年が最初だそうである。遠いところから集まってこういうことをするのは大変だろうが、なかなか意味の濃いことのように感じた。特に僕のいる信大などは、井の中の蛙で大海を知らない。その意味で、卒業設計などではなく3年くらいのうちにこうした他大学との交流を持つことが望ましく、両校の交流を羨ましく拝見した。シンポジウムの後学生を交え中華を食しながら語らった。中村さんとは10年以上前にお会いして以来で懐かしかった。高崎さんとは初めてお会いしたが、あんな建築を作っているので怪物みたいな人かと想像していたがとても気さくな優しい方で建築家というよりか芸術家という風格の人であった。宴たけなわというところで僕は最終で長野に行くべくおいとました。なかなか楽しい日曜の午後であった。

散歩

On December 1, 2007
by 卓 坂牛

近くにできたハンバーガー屋にかみさんとランチを食べに行った。我が家前面を走る津の守坂(つのかみざか)を防衛庁の方に下っていくと、先日ミシュランの一つ星をとった和食屋さん(この和食屋看板が無い)の隣の隣に、この店はある。ランチはBLT(ベーコン、レタス、トマト)サンドイッチかハンバーガー。飲み物がついて1000円。量はたっぷりあってかなりうまい。食後少し散歩。そのハンバーガー屋を出て靖国通りの一つ手前の裏道を左折し、外苑東通りの立体交差の下を潜り抜けて少し行くと敦煌という中華料理屋がある。ある人がこの店は美味しいと言って地図まで書いてくれた。美味しい店の通例で無愛想な入り口がついている。開けてみようとしたが昼はやっていないのか開かなかった。その隣に墨色の壁の日本酒バーがある。壁に小窓が一つ開いているので中を覗くとそばちょこが並んでいる。これはいけそうである。中華を食って日本酒を飲むというのもいいかもしれない。坂を上り外苑東通りに出る手前に遠藤政樹さんの円弧状の屋根の家がある。荒木町の杉大門通りを歩く。歌舞伎町の如く飲み屋が密集している。荒木町に300件近くある飲み屋の一角を担う通りである。今井屋本店というチェーン店の焼き鳥やがある。かみさんがそれを見て「焼き鳥を食べたい」と言う。新宿通りに出て左折しスターバックスに行きコーヒー豆を買い帰宅。丁度家の周りを三角形に一周歩いた。薄着で歩いたせいか体が冷えた。

講評会

On December 1, 2007
by 卓 坂牛

11月30日
昼から2年生の製図の講評会。ゲストが偏らず、同じ穴の狢にならぬように、今回は千葉の岡田さんに来てもらう。半期に2度くらいずつゲストと一緒にクリティークしていると、ゲストが何と言うかを予想するのが楽しみになる。だいたいその人の設計思想から、予想は当たる。岡田氏の場合もだいたい心に思い描いたようなものであった。早稲田らしく先ずは建築の常識ができていること、プロポーションを見て、モダニスティックなデザインの構築力があることをきちんと見る。その上で飛んでいる作品を面白がるが、ちょっとトレンディな形には目もくれない。今年の2年生はなかなか頑張っていると思う。どこまで続くかわからないけれど、楽しみである。しかし製図ができることだけでなく、バランスや、正確性、言葉、などなど、つまりオツムの回転も、いや、の方が大事なのだが。
製図が終わって生協の喫茶室で懇親会。2年生の参加者が少ない。8時頃おいとまし8時20分のアサマで東京へ。車中、千葉大の様子をいろいろ聞いた、うちより進んでいることもあれば遅れいていることもある。
帰宅すると娘につかまり12時過ぎまで英語の本につきあわされる。仮定法過去?過去完了??結構、文法は忘れるもの。「未来形の過去ってどういうこと??」なんて言われてwouldの用法をさらっと説明できない、、、、、

能天気

On November 30, 2007
by 卓 坂牛

11月29日
午前ゼミ、午後ゼミ。ゼミの前夜は徹夜が多いようで居眠りが目につく、今日はコンペの締め切りらしく輪をかけて目を閉じている奴が多い。ゼミ中なのか仮眠中なのかよく分からない。ゼミこそが唯一思考を戦わせる場なのに、そうしないのは自ら向上できるチャンスを放棄しているようなもの。かわいそうに。昔のことを言うのは野暮だが、先生と会話できる時間は、もしあれば(殆ど無かったものだ)徹底して利用したものだ。夕刻大学の委員会に出席。これから委員会の仕事も増えていく。少し憂鬱。夜雑務。9時からのレートショーを見る。

色

On November 28, 2007
by 卓 坂牛

朝のアサマで大学へ。車中クレーリーの『観察者の系譜』を読み、気付かされることが多々ある。例えば色彩に関すること。クレーリーはこの問題に関して、ことのほかゲーテとショーペンハウアーの意義を訴える。その理由は二つあり一つは彼等がニュートンによって形成された色の光学的(客観的)価値を、生理学的(主体的)領野においても価値づけたこと。そしてもう一点はロックやカントによって比較的に2次的な価値として扱われていた色の問題を、大規模に転倒したという事実である。前者は特に驚くほどの内容ではないのだが、後者は少し考えさせられる。もちろんゲーテの色彩論がそれ相応の意義あるものであることは知ってはいたいたものの、カントに対抗するほどのものとは思っていなかったからである。なるほど、近代の美=カントなどと早合点してはいけないのである。やはりモダンは一枚岩ではない。そんな当たり前のことを再認識させられた。
午後大学のキャンパス計画ミーティング。4時間近くかかった。やっと全体像が見えてきた。ほぼ一年くらいかかったのだがあと少し(だといいのだが)。夕食後成実弘至の『20世紀ファッションの文化史』河合出書房2007を読む。第一章がチャールズ・フレデリック・ワースの話である。彼の意義はオートクチュールを確立したこと。それまで洋服は富裕層が先ず生地をを買いそれをドレスメーカーに持ち込みデザインの注文をして作らせていた。そこではデザインのイニシアティブは発注者側あった。一方ワースは、自らのデザインをモデルに着せてアトリエに並ばせた。発注者には洋服の制作技術に加えてそのデザインを売ったのである。ここでは受注者側にデザインのイニシアティブがある。これがオートクチュールの確立であり技術に加え創造を商品としたのである。建築も常にこうありたい、、、、、

80年代のアメリカは僕の原点でもあるのかな?

On November 28, 2007
by 卓 坂牛

フーフー。朝一で伊藤君のオープンハウスに顔を出し、事務所に戻り午後の茶室打ち合わせのアクソメを描く。久しぶりにクライアントに見せる絵を描いた。マーカーで色付けし、できてすぐに出かける。打ち合わせが終り、イケアに行きたく豊洲にあると信じて行ったのだが無かった。しょげて帰ろうとも思ったが新たに出現した「ららぽーと」を覗く。ここはまさにアメリカである。ロサンゼルスを髣髴とさせる。そしてこの巨大ショッピングモールに人がいない。この不気味さ。事務所に戻る。10+1の校正やら、中国の追加インタビューやら届いている。本が手元にないので帰宅後校正の続き。深夜やっと終了。丸善から届いている本の宅急便を開ける。『Tokyo Nobody』や『東京窓景』で有名な中野正貴の原点といわれる『My Lost America』(写真集)をめくる。新聞書評でこの写真集は中野の若き日(80年代)の写真であり、あとがきで中野はこの写真集の写真を撮った80年代に比べ現代のニューヨークで写真をとる気にはなれないと語っていることが紹介されていた。僕はこの手のノスタルジックな言葉を信じないことにしてており、信じない自分を確かめるべくこの写真集を眺めているのだが、そんな自分の姿勢とは裏腹に80年代のアメリカ、つまり僕も過ごした80年代のアメリカにすっかり感情移入してイカレテいた。なんたることだ。

紋切り型

On November 26, 2007
by 卓 坂牛

13年間朝日新聞の天声人語を執筆していた辰濃和夫の『文章のみがき方』という岩波新書が毎日新聞の書評に載っていた。書評は読まなかったが本は早速買って読んだ。その中に自分の気に入った文章を書き抜くという教えがあった。著者は鶴見俊輔のこんな言葉を引用している。「(私は)毎日、文章を書いて暮らしを立てているわけですが、なにか、泥沼のなかで殴りあいをしているという感じです。紋切り型の言葉と格闘してしばしば負け、あるときには組み伏せることができ、あるときには逃げる、・・・・」辰濃はこう続ける「紋切り型の言葉を使わないということは紋切り型の発想を戒める、ということでもありこれはいい文章を書くための基本中の基本だといっていでしょう」。この部分を読みながら「文章のみがき方」は、「建築のみがき方」かもしれないなと感じた。つまり建築も紋切り型との格闘だということなのだ。定石どおりの表現は人に何かを伝える力が弱い。だからよい建築をつくるためには(自分も含めてなのだが)紋切り型の建築言語を使わないということが必須なのである。そしてそのためにはよい文章を書き抜くように、よい建築を描くか写すかとにかく記憶に納めなければならないと改めて感じたのである。しかし建築と文章は同じではない、文章は生まれたときからそれを身近に感じて身につけていくものであり、紋切り型が何かは自然と染み付くものである。一方建築は先ずはこの紋切り型が何かを知るところから始め、そしてそれを使わずに作る努力が必要なのである。えてしてこの紋切り型ができたところで一人前だと錯覚するものである。もちろん紋切り型さえできないことにくらべれば未だましのだが。

模様替え

On November 25, 2007
by 卓 坂牛

引越した義姉にアルフレックススの椅子とテーブルとチェエストをあげたので寝室が広くなった。そこで寝室の模様替えを決行。ベッドを移動し、掃除機をかけ、額だの軸だの箱に入っている作品を移動し、チェストの中に入っていた昔のsdを梱包して研究室に宅急便した。結構重いものである。寝室の半分がオープンになった。ここをかみさんの制作場にしよう(納得するだろうか?)。作業が終わるころ親父から電話。オフクロとも話す。まずまず元気そうである。大晦日、元旦と恒例になってきた焼き鳥、ふぐを食べに行くことを約す。午後はアレキサンダー・ツォニスが35歳の時に書いた『建築の知の構造』彰国社1980を読んだ。建築史を合理化前後に大別し、さらに合理化という概念を構造的効率を基準とするものと、機能的効率のそれに分類している。この視点は見事である。さらっと読んでからジョナサン・クレーリー、遠藤知巳訳『観察者の系譜』以文社2005を読み始める。内容は透視図法、カメラオブスキュラ、そして写真機の順に視覚的発明がされていくのだが、後者二つの間には視覚の断絶があるというものらしい。それだけ聞くと簡単な事なのだが、そこに行く経路がなかなか見えてこない。新幹線の中で続きを読もう。外は少し寒そうだが、ぶらぶら行くか。丸善で少し本を眺め、新しくできた大丸を覗いて行こう。

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