Taku Sakaushi

Diary

幸運

On September 25, 2007
by 卓 坂牛

久しぶりの会議とゼミ。その合間を縫って市役所で市長に景観賞の答申書提出イベント。報道陣も結構いた。この手のイベントはテレビではよく見るがまああのとおりのことである。夕刻は雑用のテキスト作ったり、学内委員をやっている会議の資料を作ったり。夕食後昨日の鷲田さんの本の残りをぺらぺら斜め読み、どうも後半は僕の興味からはずれていく。面白かったのは反方法論的思考としてのエッセイの勧め。エッセイのような建築というのもあるかもしれないとと考えると少しわくわくした。その後越後島さんの新著『ル・コルビュジエ創造の軌跡』中公新書2007もぺらぺら。これは本当はコルビュジエ展のオープンあたりに出る予定だったのだろうか?かなり一般読者を対象に書かれているようだ(新書だからあたりまえかもしれないが)。というわけで僕には物足りないのだが、越後島さんの鋭い視点は散見される。例えばサボワ邸はコルビュジエのピークであり限界という指摘。彼の理論のピークの時に建物の条件がゆるい仕事が来た幸運として説明している。つまりこの当時の幾何学の純化を視覚化するためには建物を浮かすのが最も理想的。しかし住宅を浮かすなどということは機能的に誰でもが望むようなことではない。しかし郊外という自由な立地と潤沢な予算、別荘という機能の自由度がその浮いた箱を可能にしたというわけだ。そしてそんな幸運はそう簡単に訪れるものではない。ゆえにサボア邸以上のものは後には出来なかったと指摘する。
うーん異論もあろうがだいたい正しい。そしてこんな書き方は今までの歴史家ならしない。でもこれが建築の普通のそして本音の解釈だろうなあ。そう、建築はかなりの幸運によって生まれる。いいクライアント、いい施工者、いいスタッフ。それは多くの名作を見ると明らかである。あまり口外すると(特にネット上でボソッと言うのも失礼なので)問題もあるから固有名詞は避けるとしても一般論で言えばやはり建築家の自邸が名作になりやすいのもその幸運を待てないからであるだろうし、幸運だからこそ、名建築家だって名作なんてそんなに多く作れるわけでもない。コルビュジエだって5つもないだろうし、、、、、だから僕にもいつか幸運は来るかもしれない。

反・方法主義

On September 25, 2007
by 卓 坂牛

A0勉強会。亀のようにゆっくり進む。倫理的誤謬の章を未だやっている。光岡訳は15ページくらいあるのだが、5時間で1ページくらいしか進まない。まだこの章が終わったわけではないけれど荒筋はロマ主義も機械論もピューリタニズムの思潮(純粋道徳主義)に後押しされながらこの時代の建築倫理(これがどうもゴシックリバイバルにおける構造的な倫理のことのようなのだが)に繋がっているということのようである。そしてこの構造的理性の制覇に対する反論が人文主義に繋がるのだが、、、、疲れた頭を引っさげ飯を食ってから長野に向かうアサマの中で鷲田清一の新刊(とはいっても初出ではないが)『思考のエシックスー反方法主義論』ナカニシヤ出版2007を読む。
先ずは近代哲学とはデカルトの『方法序説』に始まり方法主義的制覇の時代であるという。そしてその制覇のために据えられた概念が自律でありそれを支えるトポスとしての純粋があるという。「ピューリタンから『純粋理性批判』まで「ピュア」という観念はくりかえし1つの運動、ひとつの理念の名に冠せられてきた」と言う。そしてこの方法という理念は様々な分野で実体化する。「航海においては海図、建築においては設計図といった具合に、そこではなんらかの見通し、ないしは構想といったものを欠くことはできない」と述べる。僕の昔の論考で言えば全体性批判に相当するようなこの指摘には素直に共感。更にこうした方法主義的制覇への批判を行なったのがサルトルとガダマーだという。ガダマーの『真理と方法』は「近代の知の地平において次第に失われていったフマニスム〔人文主義〕の伝統を復権することで、真理をその方法主義的制覇から救済しようというモチーフである」と指摘した。
このあたりまで読んでくると、昼に苦しんで読んでいたスコットの倫理批判がどうしたって重なってくるではないか。しかしガダマーが真理と方法を練り上げたのは60年代だからスコットの発想はその40年も前のことであり、そこに1つの思潮としての流れがあるのかどうかはよくわからない。しかし人文主義が近代的知への批判として用いられていたということはスコットを読む上では重要なポイントかもしれない。

原稿

On September 24, 2007
by 卓 坂牛

朝から原稿の整理と図版の整理をしていた。完全ではないが、とりあえず出版社に送ろうかな?著作権の目処を付け、文章を縦書きにし、前書きを考える。この3つが終わったら送りたいところ。なんとか横書きを縦書きにした。数字の書き換えだけでも結構な手間だった。著作権の目処はほぼついた。コピーライトは持ってないという出版社が3つあり、彼らも誰が著作権保持者かを知らないという。そんなことあるだろうか?でもそんなことならもう追求はやめよう。三つめも前書きだがほぼ書けた。建築の規則は本来二つありここで記すことはその第一部であることを書ければそれでいい。などということをしていたら2時を回ってしまった。さあ寝よう。

構造改革の行く末

On September 22, 2007
by 卓 坂牛

統計値上日本の労働生産性は低くOECD加盟30カ国中19位だそうだ。しかしそれは数字のいたずらで実質的にはそんなに低くないと『ホワイトカラーは給料ドロボーか』門倉貴史光文社新書2007に書いてある。しかし続けてこうも書かれている。少子化が進みGDPが低下していくと国の豊かさは減少する。それに対抗する手段は効率の向上であり具体的には構造改革とイノベーションであるとのこと。そういう理屈が小泉内閣の政策論理であったことは言うまでも無い。そんな本を読んだ次の日に朝日新聞の友人から『分裂日本』朝日新聞2007が届いた。彼がチーフとなってまとめた去年の連載記事をまとめて本にしたものである。内容は正に昨日読んでいた構造改革の陰の部分を浮き彫りにしている。高島平における中流層崩壊の実体、そして中国地方の地方都市の格差の現出をはじめ様々な事実が示されている。自民惨敗、安部退陣。そして麻生、福田が異口同音に格差是正を合言葉にして明日総裁選である。構造改革はどのような形で今後進むのだろうか?止めるのは簡単である。今必要なのは修正であろうと思われる。その方法が二人の言葉からはまだ見えない。

バイバイヘンリケ

On September 22, 2007
by 卓 坂牛

9月21日
朝メールの返信など終わらせてから現場へ。東京はまだ暑い。大工が4人入って急速に進んでいる。一晩にしてボードがほぼ貼り終わったようだ。そのままリーテムへ。中国の設計院の実力がないと言ったらいきなり副社長は中国に電話をして人を換えろと要求。このあたりは相変わらずやることが早い。事務所に戻ると西澤君が来て富山の打ち合わせ。来週一週間彼が模型を作りこむ。夜ヘンリケ送別会。3ヶ月間ご苦労様。ワインを飲みながら折り紙で盛り上がった。月曜日にシュトゥットガルトに戻る。秋からまた大学で普通に勉強するのは信じられないと叫んでいた。日本に来る前はインドのワークショップ、年末はノルウェイで過ごすとのこと。ワールドワイドである。日本の学生も見習って欲しい。この行動力。

景観賞

On September 20, 2007
by 卓 坂牛

長野市には景観賞という賞が制定されている。毎年数件を選出するのだが今年は市制110周年ということで今までの景観賞受賞作品を対象に大賞と部門賞を選出することになった。私も選定委員の一人として今日は朝から市民投票の上位16作品を現地審査した。長野は本日快晴で暑かったが朝8時半から夕方5時までみっちり見て回った。見たことがあるものからはじめてみるものまで様々。住宅もあるところが長野らしい。つまり、歴史的町並みに考慮したものとしての住宅が選出されているのである。寺社仏閣があるところも長野らしい。善光寺に限らず、戸隠の神社もある。最後は選定委員の投票で大賞1つ、部門賞5つが選出された。来週早々に市長に答申する予定である。

さてゼミでも

On September 19, 2007
by 卓 坂牛

夏休みはコンペに時間をかけゼミが少し歯抜けになっている。意匠系の論考とは特にその方法が確立されているわけではないので工学のそれのように実験やってまとめてと言う風には行かない。ということはつまり卒論レベルの程度というものもない。もちろん僕の頭にはあるレベルというものがおぼろげにあるものの、個人の力量というものもあるだろうから後はその人に応じてということになる。尻をたたいて良いものにするのは教師冥利に尽きるのだが、それはそれで体力(精神的)勝負。まあこんなもんでいいかというのは自分の人生においても人の教育においても頭をもたげそれをひっぱたいて追い出すのは結構また体力がいる。その昔篠原先生も特にテーマを決めて論文をやっていたわけでなかったし割り切っておられたが、そうできるものならそうしたいと言う気持ちもまた頭をもたげるものである。

中東

On September 19, 2007
by 卓 坂牛

9月18日
先日サイードの自伝のごときインタビュー本を読んで改めて中東の話は難しいと思っていた。そんな訳でふと本屋に並ぶ山本七平、イザヤ・ベンダサンの昔の論考をまとめた単行本が目に付いて購入していた。『中学生でも分かるアラブ史教科書』なるもの。しかしこれは中学生でも分かるというほど簡単な本ではない。半年ほど前にイスラムに関する本をいろいろ読み基礎知識が増えているのだがやはり分からないことが多い。それはそうかもしれない。主として3つの宗教と数多の宗派が入り乱れるこの地域の話は戦争ひとつ、国際会議ひとつとっても余りに複雑。サイードの本には訳者大橋洋一郎氏の懇切丁寧な註が全てのページに亘って付加されておりそれを参考に理解は深まるのだが、註が多過ぎてこれはこれで読み進むと前の註を忘れる。文体はインタビューだから気軽な会話なので騙されるが、内容は複雑な前提が多々あるわけである。山本のこの本も同様である。

富山

On September 18, 2007
by 卓 坂牛

9月17日
富山コンペの打ち合わせ昼から夜までレイアウトを決定し、コンテンツをほぼ決める。とは言ってもデザインできていないところは多々あり、それらを埋めていかなければならないのだが、、、景観デザインなので何をすべきかは建築のように簡単にはいなかない。敷地を見ていないので直感的にこうあるべきという判断ができない。敷地を見ずに景観コンペをやるというのもなかなか大胆である。研究室の4年生に富山出身者がおり写真を送ってもらった。やはり立山は駅から見えそうだ。しかし台風の影響で天候が悪く山に雲がかかっている。

金地院

On September 17, 2007
by 卓 坂牛

9月16日
朝一で植南先生に勧められた南禅寺金地院に行って見る。一般に塔頭(金地院)とは山内(南禅寺境内)にあるものと思うが、金地院は山門をくぐる手前右横にあるので南禅寺に来たついでに寄ることは少ないだろう。というわけで来訪者も少なくお勧めですよと言われた。確かにその内容を考えると殆ど人がいないと言うのがウソのようである。金地院を出てもう少し何か見ようかとも思ったがきりがないので午前中に東京に戻る。事務所で一仕事して帰宅。一週間ほど℡がかからないのでnttにきてもらったらルーターが壊れているとのこと。こんなもの壊れるものなのだろうか?夕刻河合準雄の本を風呂で読む。この人の文章は実にうまい。

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