Taku Sakaushi

Diary

設計のスピード

On June 7, 2007
by 卓 坂牛

設計のやり方は人によってもちろん異なる。一つ一つの案をそれぞれかなり具体的につめるタイプの人、案一つ一つは抽象的な段階で止めておく人。後者のタイプは確信できるものになっていない段階で具体的につめてしまうとそれで出来た気になってしまうことを恐れるのである。学生にもそういう個人差があるようだが、僕は学生のうちは前者のやり方で、一つ一つ具体的につめてダメなら次を考えるという方法をとるべきだと思っている。抽象的なスケッチで良し悪しを判断できるほど経験をつんでいないのだから。
今日製図第五(四年)課題の中間講評会を聞きながらそんなことを感じた。皆、手が動かない。一日一案作るぐらいのスピードが無いと設計者にはなれないと思うのだが。

山田守

On June 5, 2007
by 卓 坂牛

先日東海大学の岩岡さんから山田守作品集なるものをいただいた。その中に青木淳の言葉がある。青木さんは山田守のデザインをこう言う。ディテールや空間の完成度を求めていない。それは普通のものである。標準仕様である。こう言うのは一般的にデザインとは呼ばない。デザインとはディテールから全体形までをも含めて建築家の意思のもとにある完成度を創ることであり、そうした観点からこれはデザインではないと断定する。一方で山田には不思議な雰囲気が漂っている。その全体形には独特の山田流がみなぎっている。しかしそれは全体形を含めたある別種の空気だとする。因みにこの論考のタイトルは「もうひとつの『デザイン』のあり方」である。つまり山田のデザインは細部から全体にわたる完成度を求める一般に言うところのデザインではなく、形にならぬ空気を作るようなもうひとつのデザインだと言うのである。うんうんそうかなあと思いつつもやはりちょっと無理があるか?雰囲気とはいえどもそれは山田流の未完成の形に頼っているからである。
しかし気分としては青木さんの言いたいことは分かる。確かに現代の建築が求めていることのひとつを山田が無意識に体現していたのかもしれない。山田のデザインした代々木の東海大にしばらく通った身にはある不思議な空気が感じられた。

フォーティー来日

On June 4, 2007
by 卓 坂牛

今村さんもブログで書いていらっしゃいますが、われわれが翻訳をした『言葉と建築』の著者エィドリアンフォーティーが来日し下記のとおり東京で講義をすることとなりました。僕は残念ながらその日も次の日も大学で仕事があり参加できませんが、もしこの本に少しでも関心のある方は足を運ぶことをお勧めします。
テーマ:アーキテクチュラル・インパーフェクション
日時:6月15日(金)18:00~
会場:東京大学工学部1号館15番教室
当日先着順・定員150名
フォーティーのこの本は今更宣伝するのもなんですが、極端に言えば建築が社会構築的な産物であることを言葉と言う視点から分析した本であります。こうした分析が日本では今まで無かったといっていいでしょうし、これからもなかなか登場しないと思われます。しかし建築は明らかにこうした側面を持っており、そのことに建築家は気づかなければならないであろうし、それを自らの実践の下地とせねばならないであろうことは僕が言うまでもないと感じます。

ルネサンスの現代的意味

On June 4, 2007
by 卓 坂牛

6月3日
ブルクハルトの名著『イタリア・ルネサンスの文化』を車中で読む。文化にこだわる本なので、美術が出てくるとそれは美術史にお任せしようとなるし、科学が出てくるとそれは科学史にお任せしようとなる。しかしそうした美術や科学が沸き起こる文化的基盤については徹底して論述しているというのがこの本の1つの特徴である。ルネサンスという概念を最初に正確に規定した本というだけありその内容はとても丁寧である。目次の大項目だけ見てもそれは見えてくる。Ⅰ芸術作品としての国家、Ⅱ個人の発展、Ⅲ古代の復活、Ⅳ世界と人間の発見、Ⅴ社交と祝祭、Ⅵ風俗と宗教。この中でもⅣ世界と人間の発見こそ本書の最も有名な章と言われている。そしてその内容の中でもなかなか面白いのはこの時代は階級制度は有名無実となり、世の中はフラットに変化し、教養と体力こそが人を図る価値だったという点である。さらに世界を発見するとともに風景美を発見したのも、風景画に先立ちこの時代だったというのも興味深い。神から開放され人間は神さえも人間にとってのものとしていくうえで俗化したというのもルネサンス絵画を読み解く重要な示唆であろう。
さて読み終えてふと現代のことを考えるとコルビュジエを近代のルネサンス建築家と呼んだ南條史夫氏の言葉が蘇る。近代の神たる機械と合理主義の呪縛の海に身を投じ、そこから這い上がるコルビュジエが現代を暗示していたというその言葉である。21世紀が期せずして、作るから使う、機械から人、建築から環境(風景)へとそのベクトルの向きを転じているその状況はまさにルネサンスと二重写しに見えてくる。

論文

On June 2, 2007
by 卓 坂牛

先日香山先生からお手紙をいただいた。博士論文を送付したことへの御礼の手紙である。社交辞令だとしてもお褒めの言葉をもらうのは悪い気がしない。香山先生の評は、サブタイトルにあった。僕の論文サブタイトルは、「多様性と置換性を内包した設計原理としての設計指標の提案」というものであるが、この多様性と置換性、さらにこの置換性を導くための建築固有の原理としての暫定性を指摘していることが秀逸であると書かれている。ありがたいことである。
ところで、実は以前に桐敷先生からもお褒めの言葉をいただいた。よく丹念に様々な文献にあたっていることをお褒めいただいた。先日坂本先生はむしろもっと書きたいことだけ書いたら?とおっしゃっていた。そりゃそうかもしれないが、建築論としての全体性が必要なのではと反論したくなった。しかし論文なるもの、もっと個人的でも許されるなら、そのほうがはるかに楽である。

地鎮祭

On June 2, 2007
by 卓 坂牛

信州大学は本日開学記念日でお休みである。東大の講義を朝一で終えてからT邸の地鎮祭に向かう。久しぶりである。http://www.ofda.jp/sakaushi/construction/type/01house/02/index.html今日の神主さんのイントネーションはちょっと変わっている。祝詞の声が響く中、お供え物のするめがぷーんと香る。昨晩大雨だったが今日は一点快晴で暑い。午後事務所で原稿校正、雑用。夜久しぶりに事務所スタッフとちょっと一杯。

東京で講評会

On June 1, 2007
by 卓 坂牛

5月31日
午後東工大の3年生の製図課題の講評会にゲストで行く。少し早めに坂本先生を訪ねる。私の論文について様々なご意見をいただく。その後、坂本先生のドイツのプロジェクト、大学のプロジェクトを拝見。3時半から講評会。安田先生、八木先生、金箱さん、の担当で課題は表参道の企業美術館である。既に選ばれた17人が発表。私以外に山口さんがゲスト。途中坂本先生、塚本先生が参加。クリティークだけで6人いるのだから豪華である。レベルはかなり高い。図面も模型もかなり出来ている。ただちょっと企業の美術館という割にはそのソフトの構成がない。そこが問題。終わってから奥山先生に僕の研究室の学生の論文にアドバイスをもらう。建築メディア論の内容の深め方について話を聞く。

学会選奨授賞式

On May 30, 2007
by 卓 坂牛

午前中大学で雑務をこなし午後一で学会へ。今日は学会大賞、学会賞、学会文化賞、学会技術賞、学会教育賞、そして作品選奨の授賞式である。夫婦で出席。個別に写真撮影などあり、3時から一人一人村上会長から賞を受け取る。いろいろな方にお会いした。そもそも会長とは昔1年くらい一緒に仕事をしたことがある。賞を渡された時にっこり微笑んだのが印象的。受賞式の座席は隣が小泉雅夫さん。彼は住宅で受賞。逆隣りは竹中の菅さん。本社ビルで受賞である。学会技術賞を取られた小野さんは僕の大学時代の先生だ。梅干野晃さんも技術賞である。業績賞で国際文化会館の保存に貢献したチームの中には明治の小林さんがいらっしゃった。日建の桜井さん、小倉さんからお祝いの言葉をいただいた。東工大の横山先生(同級生)、シーラカンスの赤松さん、信大の中込先生、などなどいろいろな方にお会いしご挨拶させていただいた。
いただいた賞牌は素的な彫刻。坂牛、中島、金箱の名が刻印されていた。また建築物につけるステンレス製のすばらしい銘板も送られるそうである。クライアントへのお土産である。

講評会

On May 30, 2007
by 卓 坂牛

5月29日
午前中ゼミ、午後は製図第三の講評会。課題は蔵春閣といういかつい名前のついた長野市内のモダニズム建築のリノヴェーションである。新たな機能でそれ自体を改造しながら増築させるものである。ゲストに岩岡竜夫氏をお呼びしショートレクチャーをしていただきそして講評会。最後に講師それぞれが審査員賞を決めた。今回は女性陣ががんばり5人中3人である。皆、次の課題はまた新たな気持ちで力を注いで欲しい。講評会後はゲストを囲んで研究室の食事会。岩岡氏のヴェンチューリオマージュを久しぶりに聞いた。

月曜日

On May 28, 2007
by 卓 坂牛

午前中は来週の学科会議の事前会議。授業とゼミの合間に事務所経理の質問が会計事務所からメールされる。社長に聞いてい欲しいところだが、社長はメールが出来ない。なんとも今時メールを使えない人って何?と言う感じだが、書道の先生は死ぬまでメールはしないそうだ。夕刻ゼミを終わらせ、事務所からのメールに答え、ファックスでやり取りし、夕食をとり、明日の講評会の発表者を選ぶ。1時間かけて30人。研究室の学生にも一人1つずつ選ばせる。前回の課題よりぐっと力が上がったか。しかし図面のプレゼンテーションが今1つのようである。研究室の学生に選ばせると、その学生の志向が見えてきて面白い。終わったら10時。ここに来て、いろいろな原稿やら出版やらの話が重なり、あちらこちらへの返事に追われる。本の図版はぐっと減らさないと話にならないようで、その選択はそう簡単には終わらない。今日は今日のうちに帰ろう。

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