Taku Sakaushi

Diary

空白の20年

On May 12, 2006
by 卓 坂牛

『物の体系』のAとBが次回のゼミ範囲。再読しているのだが、読みずらい日本語である。原書があるわけではないので、正確にはわからないが、うわさでは英訳の方がはるかに読みやすいという。まあそれはよしとして、一作日話題にしたスーパースタジオ同様、『物の体系』も五月革命と同時期の出版である。やはりあの時期世界の知は権力をめぐりとてもラディカルになったのであり、その後の20年は世界は死んでいたのかもしれない。なんと言うことだろうか?僕等にしてみれば高等教育を受け始める頃から就職退職するまで世界はまったくクリエィティブではなかったということである。であれば、しかしこれから本当の時代が訪れるのだろうか?磯崎さんの『建築の解体』の復刻版への前書きで彼はフランシスフクヤマの歴史の終わり1989にはまったく賛同できない、歴史はこれから始まると書いてあるがそれは喜ぶべきことか悲しむべきことか?僕にしてみれば複雑な心境である。

崇高の強度

On May 11, 2006
by 卓 坂牛

3年生の製図のエスキスを終えて帰宅(東京へ)。娘は修学旅行のようなものにでかけ、かみさんは友人と都内某ホテルに遊びに行った。誰もいない我が家に帰るのは調度一年前の今頃の様である。
昨晩ベッドの中で読んでいた『崇高とは何か』の訳者(梅木達郎)の解説が面白かった。というか凄く納得がいった。一般に崇高という概念はカントを基礎に、例えばリオタール等の理解は、人間の有限性で把捉しきれないものとしての「大きさ」や「力」なのだが、梅木氏はジャン=リュック・ナンシーをきっかけに、カントをもう少し詳細に読むことで、崇高を単に人間の有限性を超えた無限の中に見るのではなく有限と無限の境界上における往還運動と見るのである。有限がちらつくからこそ無限が意識されるというものである。この手の感覚の捉え方は僕の「建築のモノサシ」の主眼とするところである。僕の建築のモノサシも2項対立を言うのではなく、どちらかに偏る表現には強度が現われず、常に対立項の影が見え隠れするところにこそ表現の強度が現われるというもの。だからこの解釈がカントの正しい読解かどうかはべつとしてとても納得いくのである。

スーパースタジオ

On May 11, 2006
by 卓 坂牛

昨日は朝一で東京、最終で長野であった。事務所でたっぷり打ち合わせ。雑務。このwarp感覚は結構好きである。
日大の芸術学部にスーパースタジオがやって来て伊東豊雄さんとセッションするという。それにあたり文章を書いて欲しいとの依頼が来る。スーパースタジオとは懐かしい。僕らの世代においてはいわずと知れた磯崎さんの『建築の解体』に登場するスーパーグループである。『建築の解体』はサブタイトルに1968年の建築状況とあるように、ボン、フィレンツェへ飛び火した5月革命の建築的回答であった。
先日ニューヨークの友人に今一番「ホット?cool」な本を送ってと頼んだら、60年代の本を送ってきたのだが、昨今この時期への眼差しが熱い。

アー参った

On May 9, 2006
by 卓 坂牛

長野も28度。なんと授業中クーラーを入れた。夜のゼミでも思わずクーラー。この時間になるとやっと少し涼しい。窓をあけると風が心地よい。今日は地獄の火曜日。目一杯詰まったスケジュールに加えて、とある面倒臭い作業のしこりで、精神的に忙殺されてどうも集中を欠く。必死でそれを避けるために静かに、静かに、妙に神妙な一日だった。本当に疲れる暑い一日であった。

小旅行

On May 8, 2006
by 卓 坂牛

連休明けの会議、予想以上に時間がかかる。午後県内某市での打ち合わせ。電車で1時間。まるで小旅行。天気がよく景色がいい。風光明媚を絵に描いたような車窓からの眺めである。夕方研究室に戻る。明日のゼミの本を読む。グリーンバーグ批評選集。結構重い。

gw最後

On May 8, 2006
by 卓 坂牛

gw最終日は天気も悪く、家でじっとしていた(いや、今日に限らず現場に行く時以外はじっとしていたのだが)。そこで犬と戯れたり、娘とじゃれたり、かみさんと無駄話したりして過ごした。その間にリオタールとバルトを飛ばし読みした。リオタールはA0の星野君が書いた論文に触発されて読み返した。崇高論関係をよく読んでみた。しかしどうして彼はあれほどニューマンに拘るのかよく分からない。本物見てないのによく言うよと自分でも思うのだが、この手の作品はモダニズム期アメリカにいろいろあるようにも思うのだが、、、、、どこに言ったら本物見られるのだろうか?知っている人がいたら教えてください。
バルトは『映像の修辞学』。クラウスの指標論Ⅱの骨格となっているのがこれなので読み返した。コードなきメッセージは本当言うとまだ正確には理解できていないような気がする。
夜長野に向かう。車中 岡田暁生『西洋音楽史』と森田慶一『建築論』を読む。西洋音楽史はなんと言っても西洋芸術音楽の定義が面白い。それは知的エリート階級によって支えられ、主としてイタリア・フランス・ドイツを中心に発達し、紙に書かれ設計される、音楽文化となっている。つまり紙に書かれて設計されない、民謡とかジャズをはずし、800年以前のローマ時代をはずし、紙に書かれても読めない人たちははずすのである。明快。
森田さんの建築論は始めて読むが、なんとその骨格はヴィトルヴィウス「用」「強」「美」でした。
長野もすっかり暖かくなっている。やっと春だろうか?

3列スライド本棚

On May 6, 2006
by 卓 坂牛

僕の部屋の本棚は3列のスライド型である。2列のスライド型はよくあるが、3列は少ない。幅3メートルくらいのところに3列あると結構はいる。しかし入るだけに床加重がかなりになる。トン/メートルの線加重で鉄筋コンクリートの建物でも注意しないと床がたわむ。そこでこの本棚を設置するにあたっては、構造の専門化にも聞いてokをもらった。
さてそんな本棚にしたせいか、どうも自分で持っている本を自分で把握しきれていない。3列目の本は常に裏だから目につきにくいのである。最近このスライド本棚をスライドして本を探すと、買ったばかりの本に出会って愕然とする。
ロラン・バルト『モードの体系』(単行本)、樋口忠彦『日本の景観』(文庫版)、リオタール『非人間的なもの』、カリネスク『モダン五つの顔』。
事務所に来てくれたら差し上げます。

かまって欲しい?

On May 5, 2006
by 卓 坂牛

fmラジオを付けたら三谷幸喜がモンマルトルに行きたいと言っている。ゴッホとゴーギャンに興味があるようで、彼等が同居していた話をしている。ゴッホが耳を切ったのは、ゴーギャンにかまって欲しかったからだとか。本当かどうか?まるで我家の犬のようだ。さすがに犬だからそういう自虐的行為に走ることはできないのだが、ちょっと無視したり遊んでやらないと、かまって欲しくて変な場所に糞をする。かまって欲しいと生物は何かする。娘やかみさんも同じで、かまって欲しいと何かする。むくれたり、わめいたり。自分だってかまって欲しいと何かする。「おーい」とか「わーい」とか「コーヒー」とか。

二つのモダン

On May 5, 2006
by 卓 坂牛

昨日記した稲葉振一郎さんの『モダンのクールダウン』に紹介されていたカリネスクの『モダンの五つの顔』を読んでみた。
「二つの鋭く対立しあうまったく別個のモダンの存在・・・・科学的進歩主義、産業革命、資本主義によってもたらされた圧倒的な経済的社会的変化の産物と美的概念としてのモダン・・・・の関係は敵対的なものとなった」と記され、その前者とは市民革命によるブルジョア文化であり後者はそれに敵対する反ブルジョアを標榜するアヴァンギャルドなのである。建築の場合まさにこの遅れてやってくるモダニズムがコルビュジエでありブルジョア文化を体現したのがルドゥー以降の建築家となる。カウフマンの『ルドゥーからコルビュジエ』がその二つのモダンを架橋していることになる。そう考えるとカウフマンはそこに決定的な溝を描いてはいない。むしろカントに棹差し、自律的な建築への歴史が記されていたように記憶する。昨日の日記にその差はどれほどか?と疑問を呈したが、その謎はそう簡単に明かされるものでもなさそうである。

近代とモダニズム

On May 3, 2006
by 卓 坂牛

二人の時代認識
先日読んでいたオギュスタン・ベルクの『日本の風景・西欧の景観』では、近代の始まりをルネサンスにみて、そこで発明された透視図法に対して、20世紀モダニズム絵画におけるキュビズムは多視点的な見方を作り透視図を否定したものとされている。近代の主体と同時的に発生したこの透視図の否定をベルクはポストモダニズムの先取りと表現していた。呼び方はどうであろうと、近代とモダニズムとを明らかに違うものとして見る視点がここにある。一方今読み始めた稲葉振一郎『モダニズムのクールダウン』でも近代に対してモダニズムは一種の異議申し立てであり大きな物語の普及であり、ポストモダニズムも異議申し立てであり大きな物語の腐朽だというのである。ここにも近代とモダニズムを一枚岩として見ない見方が提示されているのである。
近代とモダニズムのずれというのはなんとなく頭の中ではちょっと違う何かだけどとりあえず同じグループだったのだが、こうして違うグループとして言葉にされると。少し驚きなのだが、果たしてその差はどの程度のことなのだろうか?

« Previous Page Next Page »

Archives

  • October 2024
  • September 2024
  • August 2024
  • July 2024
  • June 2024
  • May 2024
  • April 2024
  • March 2024
  • February 2024
  • January 2024
  • December 2023
  • November 2023
  • October 2023
  • September 2023
  • August 2023
  • July 2023
  • June 2023
  • May 2023
  • April 2023
  • March 2023
  • February 2023
  • January 2023
  • December 2022
  • November 2022
  • October 2022
  • September 2022
  • August 2022
  • July 2022
  • June 2022
  • May 2022
  • April 2022
  • March 2022
  • February 2022
  • January 2022
  • December 2021
  • November 2021
  • October 2021
  • September 2021
  • August 2021
  • July 2021
  • June 2021
  • May 2021
  • April 2021
  • March 2021
  • February 2021
  • January 2021
  • December 2020
  • November 2020
  • October 2020
  • September 2020
  • August 2020
  • July 2020
  • June 2020
  • May 2020
  • April 2020
  • March 2020
  • February 2020
  • January 2020
  • December 2019
  • November 2019
  • October 2019
  • September 2019
  • August 2019
  • July 2019
  • June 2019
  • May 2019
  • April 2019
  • March 2019
  • February 2019
  • January 2019
  • December 2018
  • November 2018
  • October 2018
  • September 2018
  • August 2018
  • July 2018
  • June 2018
  • May 2018
  • April 2018
  • March 2018
  • February 2018
  • January 2018
  • December 2017
  • November 2017
  • October 2017
  • September 2017
  • August 2017
  • July 2017
  • June 2017
  • May 2017
  • April 2017
  • March 2017
  • February 2017
  • January 2017
  • December 2016
  • November 2016
  • October 2016
  • September 2016
  • August 2016
  • July 2016
  • June 2016
  • May 2016
  • April 2016
  • March 2016
  • February 2016
  • January 2016
  • December 2015
  • November 2015
  • October 2015
  • September 2015
  • August 2015
  • July 2015
  • June 2015
  • May 2015
  • April 2015
  • March 2015
  • February 2015
  • January 2015
  • December 2014
  • November 2014
  • October 2014
  • September 2014
  • August 2014
  • July 2014
  • June 2014
  • May 2014
  • April 2014
  • March 2014
  • February 2014
  • January 2014
  • December 2013
  • November 2013
  • October 2013
  • September 2013
  • August 2013
  • July 2013
  • June 2013
  • May 2013
  • April 2013
  • March 2013
  • February 2013
  • January 2013
  • December 2012
  • November 2012
  • October 2012
  • September 2012
  • August 2012
  • July 2012
  • June 2012
  • May 2012
  • April 2012
  • March 2012
  • February 2012
  • January 2012
  • December 2011
  • November 2011
  • October 2011
  • September 2011
  • August 2011
  • July 2011
  • June 2011
  • May 2011
  • April 2011
  • March 2011
  • February 2011
  • January 2011
  • December 2010
  • November 2010
  • October 2010
  • September 2010
  • August 2010
  • July 2010
  • June 2010
  • May 2010
  • April 2010
  • March 2010
  • February 2010
  • January 2010
  • December 2009
  • November 2009
  • October 2009
  • September 2009
  • August 2009
  • July 2009
  • June 2009
  • May 2009
  • April 2009
  • March 2009
  • February 2009
  • January 2009
  • December 2008
  • November 2008
  • October 2008
  • September 2008
  • August 2008
  • July 2008
  • June 2008
  • May 2008
  • April 2008
  • March 2008
  • February 2008
  • January 2008
  • December 2007
  • November 2007
  • October 2007
  • September 2007
  • August 2007
  • July 2007
  • June 2007
  • May 2007
  • April 2007
  • March 2007
  • February 2007
  • January 2007
  • December 2006
  • November 2006
  • October 2006
  • September 2006
  • August 2006
  • July 2006
  • June 2006
  • May 2006
  • April 2006
  • March 2006
  • February 2006
  • January 2006
  • December 2005
  • November 2005
  • October 2005
  • Home
  • About
    • Profile
    • Team
  • Works
  • Blog
    • Text
    • Column
  • Contact
  • University
    • Lab
    • Lecture
  • O.F.D.A Home
  • #

© Copyright 2016 O.F.D.A.